アルゼンチン旅行①エチオピア航空搭乗レポ〜アルゼンチンタンゴ世界大会へ向けて

いざ、アルゼンチンへ

2024年8月。当然のように記録的な暑さとなった日本。少しでも外を歩こうものならすぐにフラフラと熱中症の症状を催す始末。直射日光は凄まじく、アスファルトの照り返しが厳しい。我々が日本の夏に辟易している間、地球の裏側で文字通り熱気に包まれている国があった。そう、みなさまご想像の通りアルゼンチンである。

熱気と言っても気温の話ではない。なんせアルゼンチンは日本の裏側、8月現在は冬なのである。アルゼンチンの冬と言えば、我々タンゴ愛好家にとっては一年で最も大切で最も興奮に包まれるときではないか。そう、まさしく世界大会が開催される時期なのだ。そこで、我々リカタンゴスタジオ一行はアルゼンチンタンゴ世界大会に合わせ、アルゼンチン旅行を計画!これはアルゼンチンタンゴ世界大会を目的にアルゼンチンを旅した一夏(一冬?)の記録である。

初めてのエチオピア航空

アルゼンチンへ渡航する便はいくつかあるが、我々が選択したのはエチオピア航空である。なぜって、世にも便利なインターネットで検索したら一番安く出てきたからだ。一番の目的は世界大会だが、レッスンに、タンゴハウスでのディナーショー、タンゴシューズやドレスも欲しいし、観光だってしたい!お金なんていくらあっても足りるわけがない。であれば節約できるところは節約。ということでエチオピア航空が選ばれたのである、単純な理由である。アフリカの航空会社を使うなんて初めてで、どんな感じなのか不安と期待が入り混じりつつ我々は航空機に乗り込む。

少々古そうではあるが、小型機なので何百人も詰め込まれて窮屈!という感じはない。今回乗ったのはエコノミーシートだったが、日本のエコノミーに比べるとずいぶんとゆったりした作りになっていたので圧迫感もない。荷物を床に置かなければ十分脚を伸ばせるスペースがある親切設計。小柄な男性や女性ならエコノミーでも快適なフライトが期待できそうだ。大柄な方だと難しいかもしれない。

(写真)実際の座席の様子。足元に荷物を置いているがまだ余裕がある。

なぜか2回の夕食、仁川での保安検査はちょっぴり面倒

成田空港から飛行機が飛び立ち、ほっと落ち着いたのも束の間、早速機内食が配られた。

(写真)成田空港を飛び立って初めての機内食。甘辛い炒め煮のチキンが白米と良く合っていた。

この時、実はチキンかラムが選べたのだが筆者はどういうわけか「チキン」の単語しか耳に入って来ず、自ずとチキンを選択することになった。私事にはなるが、筆者は羊肉が好物のひとつなのである。同行者がラムを選んだと聞いたとき、それは悔しい思いをしたものだ。ではチキンがイマイチだったのかと言えば、そんなことはない。韓国を意識してか、甘辛い味付けをした鶏肉は白飯と良く合っていた。ちょうど、チーズタッカルビのチーズなしみたいな感じだ。サラダもフレッシュで美味しいし、ピンク色のデザートはなんなのかわからなかったが、これもまた美味しかった。小さなキムチのパックがあるのが嬉しい。クラッカーに、チーズやパンも付いてくるので盛りだくさんの内容。食べ終わればすっかりお腹いっぱいだ。少食の方には量が多く厳しいかもしれないが、食いしん坊でも満足できる量だと思う。

お腹が満たされれば自ずと眠気がやってくるというもの。朝までひと眠り……というタイミングで飛行機は仁川空港に着陸。バタバタと空港職員が航空機内に入ってきて、早く降りろとまくし立てるではないか。何事かと思えば、乗っている者全員が一度保安検査を受けねばならないらしい。こちらはてっきり仁川では韓国が行き先の者だけが降りれば良いと思っていたので、何の準備もせずにまったりしていた。降りろと言われて居座るわけにもいかないので、大慌てで荷物をまとめ、小走りで飛行機を降りたのだった。

すっかり夜で人気は少なく店も閉まっていたが、仁川空港は広く新しく綺麗だった。もし昼間に来られたら、韓国料理を食べたり、韓国コスメを物色しながら退屈せずに過ごすことができそうだ。我々が到着したのは生憎夜も老けた頃だったので、空港はすっかり静かになっていたのだが。それでもお手洗いは綺麗だし、待合もゆったりストレスなく過ごすことができた。しかし、この韓国での保安検査と飛行機の乗り換えは乗客からすれば少々奇妙で面倒くさい。だって、乗り換えとは行っても別の機体へ移るわけではなく、保安検査の後、またそっくりそのまま同じ機体の同じ席に座ることになるのだ。しかもインターバルは1時間程度。乗ったまま待たせてくれてもいいんじゃないの?とも思うが、国際的な法律上仕方がないのか、はたまた航空会社同士の取り決めなのか、事情があってのことなのだろう。若干の不満はありつつも、仁川での保安検査は実にスムーズだった。スタッフがとてもテキパキしていたし、何より日本語を話せる方が多いので焦って困ることもない。なんと言っても安心感があった。

保安検査を終え、気を取り直して飛行機に乗り込む。明日に備えて眠ろうとすると客室乗務員がゴソゴソ動いている。エプロンまで付けて、カートを引いて運んできたのは夕食である。……おかしい。夕食は先程食べ終えたはずである。こんなに早く次の食事の出てくるものなのか?と疑問に感じるが、出てくるのである。恐らく、仁川空港から新しく乗り込んで来た人のために用意されているのだろう。かといって仁川空港からの乗客限定というわけでもなく、ちゃんと全員分が配られるのだ。羽田から乗り込めば2回も夕食にありつける。まだ胃に物が残っている状態で次の食事を摂るのは少々苦しい物があるが、せっかくなのでちゃんと食べる。このお得気分、味わわなければ損である。

2回目の夕食もチキンを選択。サイドの韓国らしさは変わらず、メインはマッシュポテトたっぷりのシチュー。優しいお味でぱくぱくいける。ちなみに筆者はプリンなどの甘味が好物なので、デザートのパンナコッタに心躍らせていた。

(写真)日本人にも食べやすい優しい味のシチュー。チキンが柔らかく、なめらかなマッシュポテトが美味。

エチオピア航空 機内食ギャラリー

長時間フライトでの楽しみは正直なところ機内食しかない、と筆者は考えている。一度や2度ではなく何回も口にする物だから、その内容は重要である。エチオピア航空では一体どんな機内食が出るのか。気になっている方のために、ここで一気にご紹介していく。また、紹介する機内食は筆者が食べたものになるため、すべての種類を網羅できているわけではないことをご了承いただきたい。

(写真)朝食。甘いワッフルにクロワッサンとパン。フレッシュなフルーツが嬉しい。

(写真)牛肉と麺はスパイスが効いている。筆者はキヌアのサラダがお気に入り。かなり美味しい。

(写真)牛肉とご飯、よく見ると長細い米である。サクサクと歯応えがあって美味しい。こちらもよくスパイスが効いている。

(写真)最後の機内食。鶏肉とご飯。上記と同じサクサクの長細い米。日本でいうところのわかめご飯のようなしょっぱい味付けがしてあった。

アディスアベバでのトランジットはストレスフリー

話は戻り、アルゼンチンまでのフライトである。成田→仁川→アディスアベバ→サンパウロ→アルゼンチンという航路で旅は進んでいく。仁川を出ると次に地上に降りるのはアディスアベバ。空港から外に出ないとはいえ、アフリカのエチオピアなんて初めてである。少しの期待と多くの不安を胸に抱いていたが、降りてしまえばそれらは単純な楽しさへと変わった。まず目に映る光景が日本とまったく違う。アジア人をまったくと言っていいほど見かけない。もしかして自分たちだけなのではないだろうか?(後に飛行機に乗った際、結構日本からの旅行者も乗り合わせたのだが。)エチオピアの民族衣装を着た人たちもいるし、ヒジャブをまとった女性の数からエチオピアのイスラム教徒の多さが窺える。まったく異なる文化圏にやってきたということが、視覚的にわかるのだ。旅に出たという実感がむくむくと湧いてきた。

さて、アディスアベバでのトランジットだが、結論から言うとまったくのストレスフリーだった。というのも、待機時間がたったの3時間だったのだ。しかもトラブルもなく順調。空港内にはエチオピアの民族衣装の土産物屋や、マッサージ店、カフェやファーストフード店などがあり簡単に暇を潰すことができる。アルゼンチンまではさらに十何時間もかかるので、このタイミングでマッサージ店へ行きリフレッシュしておくのがおすすめだ。

掃除されるなか過ごすサンパウロ

アディスアベバからまた飛行機に乗り、だんだん痛くなってきた膝を抱え頑張って(?)じっと耐えているとブラジルのサンパウロに到着。ブラジルが目的地の旅行者に別れを告げ、アルゼンチンへ向かう者は機内で待機だ。流石に皆、旅の疲れが出てきている。過半数が降り広く使えるようになった席で各々がうとうとしていると、空港の職員が入ってきて大声で点呼を始めた。眠い最中に耳元で叫ばれてはたまったものではないが、これは大事な仕事である。アルゼンチン行きの旅行者がきちんとこの機内にいるかを確認しているのだ。点呼が終わればゆっくりできる……と思うだろうか?そんなことはない。もう一つの大事な仕事があるのだ。そう、機内の清掃である。今度は清掃員たちがやってきて、乗客がぐったりしているなか掃除機をブンブンかけはじめる。清掃員たちはなにやら楽しそうに会話をしていた。笑顔で働けるのは素晴らしい。きっと良い職場なのだろう。彼らを少し羨ましく思いながら、清掃が終わるのをじっと待つ。長時間同じ機内の中に居るのだ、清潔を保ってくれるのは実にありがたいことである。

きれいさっぱりすっきりな機内になったら、後はアルゼンチンへ向かうだけ。飛行機は少なくなった乗客とともに軽やかに飛び立った。同行者以外は見知らぬ人々だが、もう長い時間を機内で共に過ごした者同士である。それは最早、旅の仲間なのである。あと少しで解散と思うと、ちょっぴり寂しいのであった。

ついにアルゼンチンに到着!高まる期待と緊張感!

もう限界。どんなに美味しい機内食でも、6食も食べたら飽きがくる。膝も痛くてギシギシ言っている。ずっと同じ姿勢でいるから背中も痛い。あと、もうとにかく退屈!できることは深呼吸をして気持ちを落ち着けることだった。そうしていると眠くなって、コトンと寝てしまう。そんなことを何度か繰り返して、やっと!やっと!着陸のアナウンスが聞こえた!とうとうアルゼンチンに着くのだ。来てしまったのだ日本の裏側に。

そこからはもうあっという間だった。先程までの倦怠感が嘘のように元気になり、アルゼンチンの地を踏むワクワクが止まらない。飛行機を降りると、ひんやりと冷たい空気の匂いでアルゼンチンが冬なのだと実感する。これからここでタンゴ漬けの日々が始まるのだ。この瞬間、誰もが期待と緊張で胸をいっぱいにしていたに違いないのだった。

次回 ②タンゴショーを楽しむ夜

長い長い旅を経てアルゼンチンに到着したリカタンゴスタジオ一行。長時間のフライトは体に堪えるが、なかなかに楽しいものであった。さあ、一行はこれからどんなアルゼンチンライフを送っていくのか?次回、タンゴショーを楽しむ夜につづく!!

筆者:旅行参加者Y